過労死・ブラック企業の口コミ・経験談・アドバイス0020私が初めてブラック企業と出会ったのは、大学生の時でした。それまでは安心できる求人をみつけるために、バイトであってもハローワークや大学の就職課に貼りだされている求人ばかりに応募していました。しかし、新聞の折り込み広告でみつけたあるパン屋の求人広告に目がとまったのです。とくに時給が高いわけでもなかったのですが、勤務店舗が有名デパートや高級スーパーの催事場であることから、安心して働ける会社と思ったのです。求人広告に書いてある電話番号に電話し、指定された時間に面談する売場に行きました。店員に面接に来た旨を伝えると、社長が来るから店の前で待っているように指示されました。10分ほど立っていると、社長らしき男性があらわれ、近くのカフェで面談することになりました。面談が始まってすぐに、社長が「しばらく立っているところを見ていたけど、あごをあげて立っている奴にろくな奴はいないんだよな。」と切り出しました。私は、何の話をしているのかわからなかったのですが言われた通り履歴書を出しました。社長は、履歴書をみると「うちはお金目当てで働いているやつはいなくて、仕事にたいして夢を持っているんだ」と話し始めました。あまりにも話の内容が現実離れした夢の話をしているので、「私はお金が目当てで働くので、今回はなかったことに」と言おうと思いました。ところが、私の気持ちを察知したのか、社長は「採用だよ。明日から大丈夫?9時にデパートの来てね」と言ったのです。私は、とりあえず働いてみて辞めてもいいかなと思い、帰りました。

帰宅すると、アルバイトらしき女性から自宅に電話があり「黒いエプロンと、靴下を用意してきてください。服装は黒いスカートに白いシャツです」と言われました。身に着けるものはすべて自前で用意し、当日店に向かいました。その日は、電話をくれた女性と社長と3人で入ったのですが、仕事のやり方を見ていると女性がほとんど仕事をしているのです。開店準備から会計、片付けから明日の用意まで行い社長はときどきのぞきに来たかと思うといなくなったりしていました。社長がいなくなったときに、女性に「正社員の方ですか」と聞いてみました。すると女性は「すべてバイトですよ。時給も上がらないし、仕事は多いけど社長の奥様が精神的な面を支えてくださるの」と言うではないですか。このとき、私は得体のしれない不安感がわいてきました。

翌日も私は勤務することになりました。出勤すると、私と昨日の女性だけでした。私が商品のパンの値段を覚えてこなかったことに不満を感じているようでしたが、代わりのバイトはいないようで、私と女性は交代で店を切り盛りすることになりました。その日は、有名百貨店の催事に行くことになっていましたが、自宅から催事場までの交通費は後日清算するということで、とりあえず自費で移動し開店準備を始めました。ところが、開店時間近くになっても商品であるパンが届かないのです。社長から女性に電話があり、「今日の気候は発酵に時間がかかるから遅くなる」とのことでした。百貨店の担当者は焦っている様子でしたが、私たちに文句をいうわけにもいかずショーケースに布をかけてパンの到着を待ちました。しばらくすると、社長がパンを持って到着したのですが、百貨店側に謝ることもせず黙々と並べていきました。私は、その光景をみながら「長居する会社ではない」と思いました。その日は、社長の機嫌も悪かったらしくいちいち難癖をつけては私を大勢の客の前で怒鳴っていました。私は、帰宅してから会社に電話をしました。電話口にでたのは社長の奥様のようで、社長は帰っていないと言いました。今までの経緯を話し、バイト代と交通費の清算の方法を聞きました。ところが、「あなた、タイムカードつけてたの?」と聞き返してきたのです。勤務地は催事場ばかりでタイムカードなんてありませんでした。一緒に働いていた女性に勤怠はどのようにつけたら聞いた時も「タイムカードは存在していない」と言っていました。私は、そのとき初めて「やられた」と思いました。たしかに、私が働いていた証拠がないのです。
ブラック企業とは、証拠を残さない方法を知っています。私は、なんとか働いた分の時給と交通費を取ろうと電話をしてみましたが、社長とつなげてもらえることはなく、奥様がでて「証拠がない」との一点張りでした。

結局、私は1円ももらうことはできず、泣き寝入りしてしまいました。その後、気になってインターネットで検索してみたところ、私が働いたパン屋は店舗を持っておらず、催事を渡り歩きながら販売していたことを知りました。店舗がないため、電話をするにも求人広告に出ていた電話番号しかわかりませんでした。その電話番号もまもなく使えなくなり、私はあきらめました。一緒に働いていた女性が、最後の日に「何度もやめようと思ったり、社会保険に入りたいと言ったけど、そのたびに奥様が自宅に食事に招いてくださってよくしてくれるからあきらめてきたの」と言っていたことを思い出しました。ブラック企業とは、知らぬ間に相手を目に見えない籠に入れて、飼いならしてしまうのです。ブラック企業に負けないために大切なことは、常に自分の基準を持ち客観的に証拠を重ねていくことなのではないでしょうか。

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